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平成22年7月1日更新

Wishful Hearing

 「Wishful Hearing」とは、自分に都合の良い、期待している望み通りの返答に聞きとること。「思い込み」。「期待聴取」。特に、急いでいる時、焦っている時等にこれらの傾向が強いように思われる。

 レーダーの設置されていない空港の進入管制業務を実施する航空路管制所(以下、「管制部」という)と地方空港の管制塔(以下、「飛行場」という)とのやりとり。
 場面は、地方空港を出発するA機と同じ空港に着陸するB機との関係。管制部は飛行場に対して、出発するA機について「出発を承認する。ただし、午前9時10分までに離陸出来ない場合には、出発の承認は失効する」。一方、B機は着陸する空港上空に同時刻には到達する状況にあった。両機を同時に出発、進入させると管制間隔が設定出来ないため、管制部はB機に対して空港上空で10分間の空中待機を指示した。A機には、離陸後10分が経過すれば、B機の高度より高い高度に到達する出発方式が管制部より指示されていた。
 ややあって、飛行場から管制部に専用回線で呼び出しがあった。
  飛行場:A機は、午前9時10分までに離陸出来そうにありません。
  管制部:出発承認をキャンセルします。
  飛行場:あくまでも、9時10分ですか…。
  管制部:はい。そのとおりです。
  飛行場:わかりました。
 その後、B機との無線交信を担当している管制官にB機に進入許可を与えるよう伝えた。
 午前9時9分、ふたたび、飛行場からの専用回線が鳴った。
  飛行場:A機、午前9時9分に離陸。

 これは、Wishful Hearingの事例と思われる。飛行場の「あくまでも…」と管制部の「そのとおりです」との件で、飛行場は「午前9時10分までに離陸出来れば、出発承認はキャンセルされない」と解釈し、管制部は「出発承認キャンセルされた」と解釈した。飛行場と管制部の管制官との間に解釈の違いがあったのである。
 このような事例を、みんなが経験するものではない。「こんな事があった」と紹介・報告し合えば、自分の業務にあてはめ、同種事例の再発防止に役立つものである。
 なお、上記事例は、B機が空港上空到達直前であり、再度上空待機を指示し、安全間隔の確保が出来た事例である。